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**Negotohaneteie** リンクはご自由にどうぞ、事後にでもお知らせ頂ければ”寝言”はおおいに喜ぶ事でしょう。*Negoto*

"ねごと"の寝言(*^_^*)そして、わずかな私心。
by doxx
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「笑い」の師匠、米原万里
"紳士淑女のお楽しみBlog”へ、ようこそ。
一週間のご無沙汰です。?

えっ、一ヵ月どころか二、三ヵ月のご無沙汰ですね!!
ちと長いが、お付きあい下され。

「意味がわからなくても笑うんですよお客さん。
それが紳士淑女のたしなみってもんだ!」
金森先生は金森総合病院院長。十五年も前に現役を退き、診察の現場は若い同僚達に任せ、病院全体を付かず離れず見守っている立場だ。

ある日いつものように病院内を歩いていて、オヤッと立ち止まった。金森夫人が病院に飛び込んで来たのだ。
金森夫人は院長より七つ年下の八十一歳なのだが、掃除、洗濯、炊事に庭いじり、今も元気に家事万端をこなす。
生まれてこの方お産の時以外入院した事がない。
いや、毎年一度だけ夫の病院に入院する。いわゆるドックに入って、徹底的に健康診断をしてもらうためだ。そして、いつも「非の打ち所がない健康体」という太鼓判を押してもらっている。風邪をひいたという話しさえ聞いた事がない。
だから、夫人の姿を病院で認めて金森先生が驚くのも無理はない。

予約もせずに、せっぱ詰まった様子である。
ちょうどベテラン医師が忙しかったので、最近採用されたばかりの弦巻医師が診察することになった。弦巻医師は大学を卒業したての、どことなく頼りなげな青年。

夫人が診察室に入って三分もしないうちに、診察室の扉が開いた。凄ましい形相の夫人が診察室から出てきて大声で泣き叫びながら廊下を走り抜けた。長い廊下の突き当たりで金森先生の姿を認めた夫人は、
「あなたー!」
大柄な先生にしなだれかかって泣き崩れた。
夫人が落ち着いたところで事情を聞き出した先生は憤慨した。弦巻先生の診察室に向かいながらも反省することしきりだ。弦巻先生を採用したのはやはり間違っていたのかな。
「ちょっとエキセントリックなところがある」
と他のベテラン医師や看護婦さんたちが案じていたのに、自分が押し切る形で採用してしまった。だから診察室の扉をあけつつ自然に顔が強ばり声には怒気がこもり、いつのまにか尋問口調になっていた。

「いったい全体どうしたことだね、弦巻君。大丈夫かね?いくら最近は医療ミスが流行っていると言ったて、こんな見え透いた誤診をしておったら、病院の信用はガタオチじゃないか」

ふだんはおだやかな院長先生が、口角泡飛ばしているというのに、弦巻先生は、涼やかな顔して机に向かい、なにやらカルテに書き込んでいる。

「家内はもうすぐ曾孫が出来る身なんだよ、君。
それに、オレはもうその・・・・・・・
その家内に向かって、オメデタですね、とは何事だ!!」

弦巻医師は、チラッと顔をあげると、ニコリともせずに






・つぶやいた



「でも止まったんじゃないですか、奥様のシャックリは」



集英社新書「必笑小咄のテクニック」で米原万里さんが紹介しておった。

「笑い」がなによりも好きだという米原万里さん、おいらの「笑い」の師匠だぁ〜〜
昨年11月お会いする機会があったが、死の恐怖に直面しながらもユーモアを忘れない人でした。それにしてもあまりに早いお別れが残念です。いつも笑いをありがとう、ご冥福をお祈りいたします。

米原 万里(よねはら まり、1950年4月29日 - 2006年5月25日)はロシア語同時通訳、エッセイスト、ノンフィクション作家、小説家。代表作は、エッセイ『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』、『魔女の一ダース』、ノンフィクション『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』、小説『オリガ・モリソヴナの反語法』
卵巣癌を患い、除去したが1年4ヶ月で再発。2006年5月25日に死去したことが、5月29日に明らかになった(享年56)。

by doxx | 2006-06-13 02:32 | ジョーク・格言・小噺
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たあ〜〜んと、見てくれてありがとね。”ねごと”